BPORTUSプラットフォーム

神戸市教育委員会

学校徴収金の振替口座登録手続きのデジタル化で、学校現場と保護者の負担を大幅軽減

デジタル化が遅れている教育分野。長年問題となっているのが、教職員の過酷な勤務状況です。子供たちにとってよりよい教育環境を築くには、デジタル化による業務の効率化を実現し、教職員の事務負担を軽減しなければなりません。

神戸市教育委員会は全国の自治体に先駆け、校務を効率化するためのデジタル技術の導入に挑戦してきました。そして2024年1月、弊社の提供する「BPORTUSプラットフォーム」を導入。教材費や学年・学級費などの学校徴収金の納入にかかる振替口座の登録手続きをWeb上で完結できるようになりました。神戸市教育委員会が学校現場のデジタル化に注力する背景や新サービス導入によるメリットについて、関係者に話を伺いました。

導入初年度から94%が利用した「BPORTUSプラットフォーム」

導入以前に、神戸市教育委員会(小・中・特別支援学校)で抱えていた課題とはどのようなものだったのでしょうか。

神戸市教育委員会 日出嶋様 以前から学校現場では、教育活動以外の学校運営上の事務作業が教職員の大きな負担となっていました。本来、学校は一人一人の子供に寄り添った質の高い教育環境をつくることに全力を注ぐべきです。特に教員は教育の専門職であるにもかかわらず、周辺業務に時間を取られすぎる状況が続いていました。

神戸市教育委員会としては長年、学校現場の状況を改善するため、制度や仕組みを見直してきました。その一環として約10年前から始まったのが、教材費や学年・学級費などの学校徴収金収納管理業務のSMBCグループへの委託です。この業務委託をきっかけに、学校徴収金に関するさまざまな課題解決にSMBCグループとともに取り組み始め、2024年1月には「BPORTUSプラットフォーム」の導入に至りました。

神戸市教育委員会事務局 学校支援部 学校経営支援課長
日出嶋 武 氏

今回導入に至った「BPORTUSプラットフォーム」について教えてください。

BPORTUS 和田 簡単に言うと、学校徴収金の納入について、保護者がWeb上で振替口座を登録できるサービスです。これまでは神戸市全体で、毎年入学する新小学1年生約12,000名分の口座情報は全て、それぞれの学校が保護者に紙様式の口座振替依頼書を配付し、回収していました。サービス導入後は、保護者が自身のスマートフォンで情報を入力することで手続きが完了できるようになり、学校と保護者双方の負担が減少したのです。

また、口座振替手続きのデジタル化にともなって、引き落としができなかった場合の連絡方法を、はがきから携帯電話へのショートメッセージの配信に変更しました。これにより、通知の迅速化とはがきの紛失防止を実現しました。

2024年度に入学した児童・生徒から対象になった今回のサービスは、導入初年度から新入生のうち94%が利用しています。

株式会社BPORTUS 営業部 部長
和田 典久

学校現場に寄り添ったサービス開発

サービス導入において、大変だったことがあれば教えてください。

神戸市教育委員会 石井様 大変だったのは、保護者がスムーズに手続きを進められるよう、フローを整えることです。私自身、学校で事務職員として勤務した経験があることから、保護者と直接やり取りしていた経験を活かし、案内方法を何度も見直しました。

また、例外パターンを想定し、細かい対応まで決めることも苦労したポイントの一つです。例えば、引き続き紙様式で手続きをされる方もいらっしゃるので、Webと紙様式、どちらにも対応できる案内フローを構築したり、外国籍の保護者の方に向けて多言語の案内文を作成したりしました。

サービス導入が決定した2023年の4月ごろから翌年1月までの約8カ月間で準備を進め、導入してからは今のところ、大きな問題は起こっていません。

神戸市教育委員会事務局 学校支援部 学校経営支援課運営係 学校徴収金担当
石井 智子氏

新しいデジタルシステム導入にあたっての大変さはなかったのでしょうか?

神戸市教育委員会 石井様 特に大変さは感じませんでした。導入前からすでに、学校徴収金の収納管理業務はSMBCグループに業務委託をしていたこともあり、神戸市教育委員会としては大掛かりなシステム改修は不要でした。運用方法をレクチャーいただき、スムーズに新サービスへ切り替えられましたね。

BPORTUS 和田 私たちが提供するシステムは、お客さまごとにオーダーメイドで設計しており、今回も神戸市教育委員会さまのご要望に合わせた調整をおこないました。先ほど石井さまのお話にあった、保護者への案内をどうするか、どのような操作画面だとわかりやすいのか、などを確認しながらシステム開発を進めました。ときには、いただく要望の実現が難しいこともありましたが、代替案を提案しながら進め、最終的にはご納得いただけるシステムができたと感じています。

手続き完了時間の大幅削減で、学校現場・保護者ともに負担軽減

導入後、どのような変化があったのか教えてください。

神戸市教育委員会 石井様 大きかったのは、手続き完了までにかかる時間の大幅な削減です。

サービス導入前は、保護者が紙の口座振替依頼書を学校から受け取り、学校徴収金会計事務センターに郵送するという手続きが必要でした。登録完了までには約2カ月かかり、不備があるとさらにかかる時間は増えました。サービス導入後は、保護者が専用サイトへ情報を入力すると自動的に認証がおこなわれるため、わずか10分ほどで手続きが完了できるようになっています。

神戸市教育委員会 小原様 手続き時間の大幅な短縮は、学校と保護者の双方に大きなメリットがありました。

学校側からすると、学校徴収金の執行計画を考えるうえで、入金のタイミングは非常に重要です。これまで、約2カ月経たなければ口座振替を開始することができず、実際に学校口座に入金されるまでには長い時間が必要でした。加えて、不備があった場合は手続きのやり直しが必要で、その分口座振替の開始が遅れる状況だったのです。学校は、入金状況を見極めながら、執行計画を立案しなければなりませんでした。

しかし、Web上で登録ができるようになったことで、保護者が申請した直後から口座振替を開始できるようになりました。そのため、学校はより迅速で正確な執行計画を立てられるようになっています。

一方、保護者からも、紙様式の煩雑な登録手続きから解放され、負担が減っていると感じていただいております。

学校現場では、これまで入学前の11月ごろに行われる健康診断で、紙の振替依頼書を保護者に渡していました。保護者からすると、入学までまだ時間がある中、学校徴収金の口座振替だけは先行して手続きを進めなければなりませんでした。

デジタル化による手続き時間の大幅な削減により、口座振替手続きを、そこまで早くお願いする必要がなくなりました。その結果、例年1~2月ごろに開催される入学説明会にて、入学時に必要な他の書類と合わせて口座振替の登録のご案内ができるようになったのです。保護者からすると、重要な説明を一度で確認できるようになり、必要な手続きもすべて一緒に進められるようになりました。

神戸市教育委員会事務局 学校支援部 学校経営支援課運営係 学校徴収金担当
小原 優人 氏

神戸市教育委員会 伊藤様「BPORTUSプラットフォーム」に限らず、神戸市教育委員会では早い段階からシステムを導入し、管理業務の効率化を進めていました。他の自治体から収納管理業務やBPORTUSプラットフォームの仕組みについて問い合わせを受けることもあります。その背景には、文部科学省が「GIGAスクール構想」や「自治体DXの推進」などで進めている、デジタル技術を活用した校務の効率化の動きがあります。

2023年には、文部科学省が全国の小中学校や教育委員会に対して調査を実施し、そのなかで学校徴収金の徴収方法に関する項目がありました。この調査結果によると、まだ約17%※の学校が口座振替を導入していないとのことです。

神戸市教育委員会では、学校徴収金に限らず、さまざまな手続きのスマート化を進めており、保護者の負担を軽減できていると自負しています。今後も、発信をしながら新しい挑戦を続け、市民サービスの向上や、他の自治体の業務の効率化にも貢献できればと思っています。

※参考:文部科学省「GIGAスクール構想の下での校務DX化チェックリスト」学校・教育委員会の自己点検結果総括

神戸市教育委員会事務局 学校支援部 学校経営支援課 運営係長
伊藤 真一 氏

業務の効率化にとどまらない幅広い挑戦を

今後の展望についてお教えください。

神戸市教育委員会 日出嶋様 今後も教職員の働き方改革を進めていければと考えています。

特に現在は、教職員の多忙化対策や子供たちによりよい教育を提供するために、地域や保護者と連携しながら、社会全体で子供を育てる体制づくりが必要だと考えています。すでに、定期開催の学校運営協議会にて、地域の方や保護者と学校が協力して何ができるのか、議論をしているところです。

プロフィール

神戸市教育委員会事務局 学校支援部 学校経営支援課長
日出嶋 武 氏
10年間民間企業にて勤務し、2008年度入職。
区まちづくり課(現地域協働課)係長、危機管理室係長、行財政局職員研修所課長を経て2023年4月より現職。
神戸市教育委員会事務局 学校支援部 学校経営支援課 運営係長
伊藤 真一 氏
2002年度入職。
地方独立行政法人神戸市民病院機構係長、こども家庭局幼保事業課係長、福祉局保護課係長を経て2024年4月より現職。
神戸市教育委員会事務局 学校支援部 学校経営支援課運営係 学校徴収金担当
石井 智子 氏
2010年入職。
小学校2校の学校事務、学校経営支援課情報化推進担当を経て、2022年7月より現職。
神戸市教育委員会事務局 学校支援部 学校経営支援課運営係 学校徴収金担当
小原 優人 氏
2012年入職。
特別支援学校、小学校、中学校の学校事務を経て、2024年4月より現職。
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